日時 2016年9月3日(土)〜9月11日(日)
場所 竹中大工道具館1F特設会場

 
 

製作工事も完了し、展覧会も完成形で見て頂けるようになりました。本展では、形態論である真行草に准えて空間構成とその壁仕様ごとに分類した道具類を体系的に見て頂けるように構成しています。

 
  「真行草」と左官  
 

古代中国の漢字書体から派生し、日本で形態論として形成された「真行草」の概念は、連歌・能・花・茶・
庭などの芸にも伝幡しました。特に数寄屋建築では一定の形式を形づくる上で大切です。たとえば角柱に竹の下地窓が使われていれば、聚楽土を細目に使った水捏仕上げとし、窓枠もピン角とするのです。丸みにもそれぞれの格式に合わせた曲率を用意します。展示会場に設えられた真行草の土壁を見て頂くととても良く分かります。

 
  空間構成のイメージ  

真の空間には凛とした空気が漂うほどの緊張感がもとめられます。アーチ部分の縁取りに石膏で面取を施し、面は浅葱(あさぎ)土糊土仕上げで土の質感を殺して色味だけを際立たせます。連続アーチの形状は、和の庭園に額を付け、徐々に曲率が変化する壁で人の動きと目線をさまざまな角度へと誘います。

「行」は真と草の中間の格式です。真と呼応する連続アーチは尖塔(せんとう)アーチにかわります。淡路の中塗土と京都の城陽(じょうよう)砂を吹き付け、大きめの砂を際立たせて風化した石壁のような風情をつくります。「行」という格式を和とも洋ともつかない浮遊した壁で構成しようとする試みです。

崩しではあるが風雅の心得を如何に醸せるかが「草」の格式を決めます。錆丸太の列柱に赤錆土の引き摺り仕上げの真壁という正統な仕様から徐々に壁を三次元に曲げて遊離させています。内側の壁は、大徳寺塔頭玉林(ぎょくりん)院蓑庵(ぎあん)の壁をオマージュとする黒土下地赤錆(あかさび)土荒壁様擦出(こすりだし)仕上げとしています。

そして、風にたなびく白、灰、黒の典具帖紙に石膏で化粧した立木を組合せて空間を演出します。光と影が土・木・紙の空間を彩ります。

壁の仕様について

 

真の壁は、合板下地に石膏で処理を行い、浅葱土の糊土仕上げとしています。

面取は1㎝に型取りした上で石膏を塗り、正確に仕上げています。

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行の壁も下地は真と同様です。1分5厘程の砂利を投げつけた上に大きめの砂を配合した土を吹き付け、乾燥後にスポンジでふき取ります。この時に浮いている石は剥脱し、その痕が残ります。

面取りは真とは逆に型板を入れ、その上から土を刷毛塗りしています。

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草の壁は、赤錆土の引き摺り仕上げです。鉄鏝に松の柾板を貼り付けた特製鏝を使用し、荒く斜めに漣(さざなみ)模様をつけています。玄界灘の波をイメージしたのだそうです。

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草の内側の壁は黒土下地赤錆土荒壁様擦出仕上げです。

赤錆土で下地塗した後、1寸程の土塊を残して貼り付け、砂利も投げつけます。

その上から少量の色粉を混ぜた黒土を塗付け、乾燥しない内に赤錆土を吹き付けます。
塗厚は合計で2分以上になります。

数日すると土が乾燥して痩せ、土塊と砂利が浮かび上がり、荒壁の様に凸凹感が強くなります。最後に手擦りして表面の土を少し落とし、黒土を染み出させます。

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