記念講演会 日中韓の棟梁 技を語る

日時 11月29日(土)11:00〜17:30

場所 兵庫県立美術館ミュージアムホール

講師 小川三夫氏(日本)、李永革氏(中国)、申鷹秀氏(韓国)

司会 藤井恵介氏

 

本年の「技と心」講演会は「日中韓 棟梁の技と心」展を記念して、日中韓三人の棟梁が一堂に会する講演会を開催しました。司会には東アジア建築史が専門の藤井恵介氏(東京大学教授)をお迎えし、三人の棟梁たちの講演、最後に三人が登壇したディスカッションと、大変盛りだくさんのイベントです。

今回の会場は兵庫県立美術館ミュージアムホール。夕方までの長時間の講演に関わらず、200名をこえるお客様にお越し頂きました。

はじめに、日本の堂宮大工として、小川三夫棟梁による講演「堂宮大工の技と棟梁」です。法隆寺や薬師寺などの日本の古建築の素晴らしさ、また自身の修業時代の逸話、日本建築の美しさの工夫、宮大工の口伝などについて、スライドを交えて、お話し頂きました。

次いで、中国故宮(紫禁城)修理組織を率いる李永革氏による講演「官式古建築営造技芸-紫禁城をまもる」です。ご自身が携われている紫禁城の保護事業の話からはじまり、中国宮殿大工に伝わる技の数々を紹介されました。日本とは異なる墨付や刻みの具体的説明で、専門的な内容についても、豊富なスライドを交えてわかりやすく解説いただきました。

次の講演は韓国の申鷹秀氏による「韓国の大木匠―千年の宮殿をつくる」です。申氏は韓国宮殿建築の第一人者で、近年ではソウルの南大門再建工事に携わったことで知られています。ご自身の歩みを振り返った後、大木匠の具体的な仕事内容を紹介されました。韓国式の伐採作業の儀式、彩色華やかな宮殿に対して住宅では杢目の美しさを吟味することなど、普段知ることのできない韓国大工の世界を紹介されました。

最後のセッションとして、三人の棟梁が壇上に勢ぞろいしたディスカッションです。司会進行の藤井恵介氏から、大工の腕の見せどころや最も重要な道具、棟梁の役割などについて、それぞれの棟梁たちへと質問がなされていきます。同じ質問に対しても、それぞれのお国柄を反映した答えに、日中韓の文化の違いが浮き上がってきました。

中国の李永革氏は、棟梁の重要な役割として、古典建築の習熟を挙げて、体系化された中国宮殿建築の世界を紹介。また、中国で最も重要な道具としてチョウナをとりあげて、道具にまつわる口伝などを交えて説明されました。

韓国の申氏が最も大切な大工道具として取り上げたのは台カンナ。自身の現場の経験を交え、韓国の大工道具の移り変わりについても触れました。韓国大工は押し使いだけでなく、日本式の「引き使い」も両方こなせるという意外な発言に、会場からは驚きの声が上がりました。

日本の小川棟梁からは、大工の腕の見せどころとして屋根の美しい反りを挙げて、また棟梁の役割は現場全ての責任を負うことだという発言に、会場は引き締まった雰囲気に包まれました。

最後はお互いの国の建築や技術の感想を述べてまとめとなりました。同じ木を扱う日中韓、建築や技術、直面する課題など、多くの共通点をもつことをあらためて確認しました。貴重なお話しをいただきました講師の皆様、また長時間にわたるご参加をいただいたご来聴の皆様、ありがとうございました。

 

巡回展「日中韓 棟梁の技と心」名古屋会場では、本日司会を頂いた藤井恵介氏の講演会、また小川三夫氏による実演を予定しております。詳しくは下記をご参照ください。

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