実演
中国・韓国
受け継がれてきた棟梁の技
日時:11月30日(日)
①午前の部 10:30〜12:00
②午後の部 13:30〜15:00
場所:竹中大工道具館 木工室
講師:①午前の部:[韓国]申鷹秀(シン・ウンス)
②午後の部:[中国]李永革(り・えいかく)
午前の部は、韓国の棟梁の技。まずは宮殿建築に使われる赤松の説明です。日本で松は「曲がった木」のイメージが強いのですが、韓国の宮殿で使う赤松は寒い地方で育った年輪が詰まったまっすぐ上に伸びているものを探して使うのだそうです。
次にT字定規の実演です。T字定規は柱・梁など大きな部材に墨付けに使う道具で、韓国の棟梁が最も良く使う道具です。T字定規は現場ごとに柱の直径に合わせて棟梁が自ら作ります。
丸い柱にまっすぐ直線を引くこともT字定規で行います。お客様にも実際にやっていただきました。直線は墨サシをT定規に密着させて、下から中心線へ、左右半分ずつ引いていきます。細い線でまっすぐな線を引くことは意外と難しく、熟練の技が必要です。
続いて鉋の使い方。韓国の鉋は中国と同じく本来押して使うものでしたが、現在は多くの現場では日本のように引いて使っているそうです。しかし申棟梁は師匠から押して使うように教わったとのこと。引いて使う時と押して使う時を比べると、引くほうがもっと大変で、押し使いのほうが体に負担が少ないといいます。
最後に鑿(のみ)です。韓国の本来の鑿は木の柄がなく、すべて鉄でできています。赤松は硬いため、仕事の効率を考えるとすべて鉄でできているほうが良いとのことです。
午後の部は、中国の棟梁の技です。講師の李永革氏に加えて、同じく故宮博物院の翁国強氏にもご参加いただきました。
まずは、丸太を側柱に見立てて、柱に墨付けをします。中心線や、内転びの基準線、ホゾの位置などを描いて、それぞれをあらわす墨付け記号についても紹介しました。有効な線には「×」、無効な線には「○」と書くなど、つい間違えてしまいそうですが、大工ならば知らなければならない規則です。
次に、鋸の実演です。中国の枠鋸(わくのこ)は、二人で引くことができます(実際にはもっと大きな鋸を使います)。作業姿勢としては、やはり先輩が上になるそうです。
続いて、隅の飛檐垂木(ひえんだるき)の製作方法について説明しました。隅木の両側の対称の位置の垂木を、一材から切り出すといいます。会場には建築の実務に携わっておられる方も多く、興味津々の様子でした。
中国の宮殿建築で使われた楠木(なんぼく)という木の紹介です。拡大すると金糸のように繊維が光って見えるということで、参加者が順にルーペで覗きました。
最後は鉋の実演です。中国の鉋は押して使うものですが、実演では押したり引いたりしながら、その違いについて説明していただきました。
各実演ごとに会場から多くの質問がありました。丁寧に答えていただいた棟梁はじめ参加していただいた皆様、どうもありがとうございました。
名古屋会場では小川三夫氏による実演(2015年2月15日)を予定しています。中国や韓国とまた違う日本の棟梁ならではの技を見ることができるまたとない機会ですので、ぜひ足を運んでみてください。
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