日時 6月12日(日)13:30〜16:00

会場 東京大学弥生講堂

講師 内田祥哉氏(東京大学名誉教授)・藤森照信氏(東京大学名誉教授)

東京・湯島の国立近現代建築資料館で開催中の展覧会「資料にみる近代建築の歩み」の記念イベントとして、6月12日(日)に講演会「ものづくりの近代建築史」を開催いたしました。講師は内田祥哉氏と藤森照信氏。昨年11月に神戸で開催した同題の講演会と同じく、お二方にそれぞれの視点から近代建築における技術や職人について語っていただきました。

最初は藤森氏の講演。鉄骨造と鉄筋コンクリート造を取り上げ、先駆的な技術の萌芽は素人が無茶苦茶にやるところで生まれる、という趣旨で、鉄筋コンクリートの発明者・モニエの作った給水塔や、窓の桟までコンクリート打ち放しで造られた建物など、おもしろい事例が紹介されました。

これは、丸の内ビルヂング解体時の写真から震災後に施された補強を紹介する様子。丸ビルはアメリカの最先端の施工技術で建てられたものの、地震への対策が不十分だったため、関東大震災で大きな被害を受けました。技術は試行錯誤の連続で洗練され、発展してきたという一例です。

続いて内田氏の講演では、戦後の大工仕事についてお話しいただきました。

戦後復興として最初に建ったのは木造建築であったこと、その後鉄筋コンクリート造にかわっても現場で型枠を作る大工が活躍したこと、一方で都市火災対策などの理由で学会で木造禁止の決議がなされる経緯など、戦後における大工や木造建築の位置付けの変遷が紹介されました。

休憩をはさんで、対談に移ります。内田氏がつくった鉄骨の立体トラスの話を軸に、バックミンスター・フラーが当時会いに来たことなど、貴重なお話を聞くことができました。

神戸会場とはまた違った展開でしたが、難しくなりがちな内容をわかりやすく説明していただき、ほぼ満席となった会場の皆様も楽しんでいただけたことと思います。

 

展覧会「資料にみる近代建築の歩み」では、神戸・名古屋会場でも紹介した明治から昭和戦前の建築技術に加えて、立体トラスによる大阪万博のお祭り広場など、戦後の建築技術も紹介しています。さまざまな新しい技術が導入され、普及・定着していくまでの試行錯誤の道のりを、展覧会場でも是非ご覧ください。

 

参考:神戸における講演会のレポートはこちらをご覧ください。