日 時 2月6日(土)13:30〜16:30

見学先 名古屋市市政資料館・旧豊田佐助邸・名古屋陶磁器会館 ほか

 

2月6日、「名古屋の近代建築をめぐる」と題した見学会を開催いたしました。白壁地区周辺に残る近代建築を見て回る企画です。講師は大阪歴史博物館の酒井一光氏と、多治見市モザイクタイルミュージアム担当の村山閑氏。近代建築としての位置付けを酒井氏が解説し、外装・内装で多用されるタイルについて村山氏がさらに解説する、というかたちですすめられました。

まずは昭和8年竣工の名古屋市役所と昭和13年竣工の愛知県庁舎を外から見学しました。いずれも鉄骨鉄筋コンクリート造で、外装にはタイルが貼られています。市役所は内装まで質の高いタイルが使われているに対して、県庁舎は資材統制のはじまっている時期にこれだけのものが建ったこと自体がすごい、とのこと。

次は名古屋市市政資料館。大正11年に裁判所の庁舎として建てられた建物です。こちらは煉瓦と鉄筋コンクリートを主構造として、外装に小口サイズの化粧煉瓦を貼っています。内部もステンドグラスや漆喰で大理石模様を描いた柱など、いろいろな表現がこらされていました。名古屋の近代建築保存の先駆的な例としても知られています。

続いて、旧豊田佐助邸と旧春田鉄次郎邸。いずれも大正末年の建築です。旧豊田邸洋館の外装は白いタイル張りで、よく見ると覆輪目地が使われています。一方、旧春田邸は建築家・武田五一が設計した貴重な建物です。

続いて訪れたのは、文化のみち撞木館。大正末から昭和初期に建てられた陶磁器貿易商・井元為三郎の邸宅で、台所や洋館のサンルームなど、上質なタイルがふんだんに使用されています。

最後は、昭和7年竣工の名古屋陶磁器会館。外壁は釉薬の厚くかかったスクラッチタイルで、表現主義的な外観とあわせて濃厚な雰囲気を醸し出しています。

内装も、床や階段腰壁に細かく張り詰められたタイルは圧巻で、特にエントランスの床に整然と並んでいる五角形の「ダイヤ」は貴重とのことです。

 

 名古屋をはじめ、常滑・瀬戸・美濃など焼き物の産地が近くにあるだけに、名古屋の近代建築はタイルが非常に充実しています。欲張ってたくさん見て回ったために駆け足になってしまいましたが、大正末から昭和初期の建物のさまざまな表情・表現を一日で見比べることのできる、贅沢な見学会となりました。

 

 なお、今回見学した施設の多くは、一般に公開されています。「近代建築 ものづくりの挑戦」展とあわせて、街中に残る貴重な近代建築の数々もぜひご覧になってください。