現在開催中の神戸会場の様子を写真でお伝えいたします。
会場は大工道具館1Fホールです。三章構成になっておりそれぞれ部屋が分かれています。
今回の展覧会は建設会社大手五社をはじめ、企業や大学から貴重な資料を出品いただきました。冒頭の2点は「為替バンク三井組柱頭」(明治7年)と「清水満之助本店煉瓦基礎」(明治36年)です。普段は清水建設の本社内に展示されているものを特別にご出品いただきました。
第1章「建築の文明開化」は江戸時代の棟梁の歴史から始まります。右手の彫物は9代竹中藤右衛門によるもの。左手の儀式道具は幕府大棟梁甲良家伝来の貴重なものです。
「棟梁、洋風に挑む」のコーナーで紹介しているのは、二代清水喜助の擬洋風建築です。写真はもともと三井組の本店として計画され、その後国立第一銀行となった建築の模型です(竣工:明治5年、模型製作:昭和5年)。NHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」の中で話題になる「バンク」はまさにこの建物です。なお冒頭で紹介した「為替バンク三井組」はその後に同じ清水喜助によって建設されたものです。
「洋風木造建築の手法」コーナーでは、明治時代に導入された「下見板」や「洋小屋」など洋風木造建築の技術を、模型で紹介しています。
「煉瓦をつくる、煉瓦を積む」コーナーでは、明治時代の煉瓦とあわせて、当時の煉瓦の積み方を実際に積んでみて確かめるハンズオン展示も用意しています。
第2章「歴史主義との格闘」では、日本人が本格的な西洋建築の技術を学び取っていく過程を紹介します。写真右手は「日本人建築家の登場」コーナー。ケースの中には古典建築の名手と称された長野宇平治の愛蔵書を展示しています。左手は「建設業の近代化」コーナー。建設会社の中に設けられた設計部による彩色図面を紹介しています。
「進化する煉瓦造」コーナーでは、イギリス人建築家コンドルによる煉瓦建築「三菱一号館」とその弟子辰野金吾による「東京駅」に見る煉瓦造の発達を紹介しています。
第3章「鉄とコンクリート」では、近代建築を変えた二つの材料「鉄」と「コンクリート」を取り上げています。
こちらは枢密院(現・皇宮警察本部)と呼ばれた建物の配筋模型です。コンクリートの技術が使われ始めた頃はこのような模型で検証したのでしょう。京都大学からお借りしました。
「コンクリートが建築を変える」コーナーでは、関東大震災前の建築に使われていたカーンシステムと呼ばれる鉄筋を紹介しています。こちらは清水建設技術研究所より出品いただきました。
「タイルとテラコッタの流行」コーナーです。京都大学教授・武田五一が収集したタイルやINAXライブミュージアムより借用したテラコッタ型枠を紹介しています。
「歴史主義の到達点」コーナーでは歴史主義建築の最高峰と称される明治生命館における設計・施工技術を紹介しています。中央の青焼き図面は矩計図と工程表、仮設計画図です。左手にはグリル(面格子)と工事の記録映像を展示しています。
B2Fのライブラリーには特設ビデオコーナーを設けました。右手のTVでは昭和初期の名作「大阪ガスビルディング」と「明治生命館」の工事記録映像をご覧になれます。左手には「この土地の記憶」と題して竹中工務店の本店がこの地にあったときの記録を紹介しています。
展覧会はこの後、名古屋と東京に巡回します。関西近郊にお住まいの方は12月27日まで開催していますのでお見逃しなく。