昨年末に神戸で開催してご好評をいただいた「近代建築 ものづくりの挑戦」展、名古屋会場がオープンいたしました。
会場はトヨタ産業技術記念館の特別展示室です。左側の入口から右側の出口まで、展示を一巡すると、幕末から昭和戦前までの建築技術の変遷をたどることができます。
最初は江戸時代の棟梁の仕事を紹介するコーナー。江戸幕府の作事方大棟梁・甲良家に伝来した貴重な儀式用大工道具のほか、のちに建設業を起こす竹中家・清水家が江戸時代に手がけた仕事を紹介しています。
第1章は「建築の文明開化」。近代建築のさきがけとなった二代清水喜助の擬洋風建築などを紹介しています。右手前に見えるのは、奇跡的に今に残された為替バンク三井組の柱頭。建物は破天荒ながら、柱頭は良くできたまっとうなつくりです。
続いて、西洋から導入された木造・煉瓦造の技術を紹介しています。左奥に見えるのは神戸でもご好評いただいたハンズオンコーナー「煉瓦積みにチャレンジ」。イギリス積みとフランス積みの違いを実際に積みながら感じていただけます。
第2章は「歴史主義との格闘」。日本人建築家や請負業者が登場し、日本にも西洋に見劣りしない本格的な歴史主義建築をつくるべく格闘していく時代です。ここでは、近代的な建築業界が成立する過程を、図面や資料をとおして辿っています。
この時代の建築技術として、煉瓦造の耐震化・意匠化の試みを、三菱一号館や法務省、東京駅などの資料を中心に紹介しています。煉瓦造のなかに部分的に導入される鉄やコンクリートの技術は、次の時代につながる貴重な学習の場となりました。
第3章の「鉄とコンクリート」で紹介するのは、煉瓦造にかわって登場する鉄骨造と鉄筋コンクリート造の技術です。右は鉄骨造の日本橋三越の柱脚、左は鉄筋コンクリート造の枢密院の配筋模型です。
鉄筋コンクリート造建築の外装表現として、タイルやテラコッタも紹介しています。
展示の最後は歴史主義建築の到達点として、昭和9年(1934)竣工の名建築・明治生命館を紹介しています。嘉永7年(1854)の日米和親条約締結による開国からちょうど80年。その間に達成された設計・施工技術の進歩には驚かされるばかりです。
シアターコーナーでは、大阪ガスビルと明治生命館の工事映像を上映しています。一見淡々とした映像ですが、手仕事感あふれる施工の様子や、今ではとても考えられない危険な作業など、おもしろい場面が目白押しです。
会場の出口付近のパネルでは、会場のトヨタ産業技術記念館でみられる近代建築の技を紹介しています。展示会場から少し足を延ばすだけで、大正時代の工場の煉瓦壁のほか、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造の技術を、実際に見ることができます。展示とあわせてご覧になれば、近代の建築技術に対する理解がさらに深まることでしょう。
本展覧会は4月3日までの開催となります。期間中には記念イベントとして見学会(2月6日)、ワークショップ(2月14日)、講演会(2月28日)を開催いたします(詳細はこちら)。ぜひご来場ください。