オープニングイベント「若手職人によるオブジェ公開制作」
日時 2016年1月30日(土)〜2月6日(日)
場所 竹中大工道具館1Fテラス、B1F中庭

日本の面影展開催を記念して、エバレット・ブラウンさんと交流のある相良育弥さん(茅葺き職人)、都倉達弥さん(左官)、山口陽介さん(庭師)らにより、オブジェが制作されました。テーマは「現代にも受け継がれている日本の面影」です。

① 「+-one(プラス・マイナス・ワン)香りの世」  ・・・B1F中庭
一つ目のオブジェは企画展開幕の一週間前から着手され、プレイベントとなりました。
庭師の山口陽介さん発案の本作品は、香道の一つである源氏香「梅枝(うめがえ)の図」をモチーフとするデザイン。梅枝は初春(1月、2月)を表す季語だそうです。
源氏香は5回香りを聞いて、その香りをあてる遊び。その遊びを彼らの関係性に見立てたそうです。1人目はブラウンさん、2人目は相良さん、3人目は都倉さん、4人目は山口さん、5人目はいろんな人との出会い。そんな交わりから、色んな可能性が生まれ、成長しています。「プラスマイナスワン、決してゼロにはならない」がコンセプトです。

まず最初に木枠を組み、枠の中へ相良さんが茅(葦)を段々に詰めていきます。このような茅の使用例は他にはなく、相良さんも初挑戦だそうです。

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茅を真っ直ぐに刈りそろえた頃に、左官工事が始まりました。まず木枠の外側に下地を作り、その上にセメント、白漆喰を塗り重ねていきます。仕上げは雪をイメージして上品な白色に。寒い冬は塗った土が乾く過程で白っぽくなる「白華(はっか)」という現象が起こるため、白色にしたそうです。

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最後は山口さん率いる庭師の出番です。松竹梅と茶に関連する植物(梅、リョウブ、クマザサ、オカメザサ、松、チャノキ)が配置され、苔を敷きます。

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シンプルな茅と土のオブジェが植物に引き立てられ、敷瓦と土壁の中庭が、いつもとは一味違う風情のある空間になりました。

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②「LENS」 ・・・1Fテラス
カメラのレンズをイメージにデザインされた球体のオブジェは、茅葺き職人・相良さんの発案です。エバレットさんに写真を撮られた時の「レンズに吸い込まれるような感じ」を表現し、来館者もレンズ(このオブジェ)に吸い込まれるように中に入ってもらおうというアイデアです。

あらかじめ作っておいた竹編みの下地をどんと据え、外側に茅を葺いていきます。球体の茅葺きは日本にはなく、もちろん相良さんも初の試み。葺き納め(てっぺん)は可愛らしいとんがり頭に。でもこのままでは雨が漏ってしまうため、てっぺんの仕上げを左官の都倉さんに託すことに。

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下地の内側に、都倉さんが土を塗り重ねます。

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土台と床も左官の仕事。丁寧に塗っていきます。

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庭師さん達が入口へと続く道をつくり、四角い石や苔、入口の正面には手水鉢を配置しました。 76_10_8166

頭のデザインが納得いかず何度も塗り直していた都倉さん、最後は一気にドングリのような段々に仕上げました。

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庭石にたたえられた水が景色を映し、見る角度によって、また時間によっても表情が変わります。山口さん曰く、水はレンズに入ってくるいろんな光や風景を表しているそうです。

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今回のオブジェ制作、見ている側も楽しかったのですが、職人さん達ご自身が一番楽しんでいらっしゃったように思います。職人さん同士が技を競いあう姿、新しい事に挑戦する姿、悩んだりする姿に「日本の面影」を見た気がします。日本の伝統文化もきっとこんな風にして作られてきたのでしょう。
オブジェは3月13日(企画展終了日)まで展示されています。どうぞお見逃しなく。

 

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