東京展を開場しました。

会場は竹中工務店東京本店1Fギャラリー・エー・クワッドです。入口を入ってすぐ右手になります。どなたでもご入場頂けます。

入口には、左官職人 久住有生(くすみ なおき)氏による土の造形が展示されています。土のゲートは、開場初日にオープニングイベントとして仕上げられたものです。別途、イベントレポートで様子を公開していますので、そちらもご覧ください。

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ゲートはあえて狭く、低くつくられています。お茶室の躙口(にじりぐち)のようなもので、視界を変える効果を狙っています。荒壁と同じ調合でつくり、ひび割れが生じた独特の表情を見せています。

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ゲートを潜ると土の壁がお迎えします。版築を突き崩した荒々しい土の表情となっています。淡路の海岸沿いにある、波に削られて崩壊寸前のところでとどまる荒い土肌を再現しています。あえて設けた亀裂部分の肌も面ごとに変えることで土の表情の豊かさを感じることができます。

このオブジェを中心に、反時計回りに会場を廻っていただくと、左官小史―東京編、京の名品、東京の鏝と左官の歴史と道具をご覧いただけます。展示用に歴史をダイジェストで構成していますが、初公開のものも数多く、これまでの左官史を塗り替える内容となっています。

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今回は江戸時代の鏝を多く展示しています。これまで支点を中心に据えた中首型の鏝は明治以降と考えられていましたから、江戸時代に既にこれほどの完成度の鏝があったという事実に驚かれる方も多いと思います。特に江戸末期に活躍した雁金銘の水捏撫鏝は必見です(写真中央)。

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東京の鏝でご紹介する昭和7年作、兼定の撫切鏝も必見です。通常一種類の鉄を鍛えてつくりますが、この鏝は二種類の硬さの異なる鉄を合せて作っています。この製法がその後の撫鏝にも引き継がれていきます。他に見ることがない独自の技術です。「甘いのに(柔らかいのに)アマが浮きやすい(硬い鏝の特徴)」といわれた兼定の秘密が解き明かされます。

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つづく久住章の鏝の展示では、およそ500丁の鏝を数寄屋の真行草の壁とともに紹介しています。土壁を使えばそれだけで草の建築と解されますが、久住氏はその中でも分類して草の真、草の行、草の草と形式を使い分けていました。その概念を映像とともに分かりやすく展示しています。

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サンプルコラージュは、左官の久住親子がこれまで製作したサンプルをコラージュしたものです。左官で描く絵画をイメージした新しい表現に挑戦しています。京の土ものから漆喰、土蔵など日本の伝統技術を習得し、ヨーロッパの漆喰彫塑や石膏技法までをも網羅した久住氏ならではの作品です。

粋な東京左官の榎本新吉氏を偲んだ展示をつくりました。職人に限らず、近所の子どもたちから皆に愛された職人。その人間像を遺された言葉と道具で表現しました。

皆様のご来場をお待ちしております。

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