鑿の使い方

鑿の使い方は難しい大工仕事の一つに挙げられ、俗に「穴ほり三年」といわれている。

鑿の仕事は何本もの道具を必要とするため、それらの置き場所を事前にきちんと確保し、泥などがつかないように注意することが肝心である。姿勢の取り方は、通常は材の右側に腰掛け、右足は常につま立てておく。玄能の払い方は肩からもちかけ、外に振り回して振り下げるのがよいとされ、垂直に振りかぶったり、横なぐりに叩くのは大工の技ではない。

鑿を使う時には、対象となる材の性格を考えて使うことが大事である。ホゾ穴を掘る場合、木目を考えて、鑿の種類と加える力を使い分ける。木目を切断する時(右図A〜B)には穂の厚い鑿を用い、木目に沿って鑿立てる時(B〜C)には穂幅の広い広鑿を使い、墨の外まで割れてしまわないように注意して叩く。また右図のように材の表裏に注意して、割れる方向を予測しながら鑿を進める。

穴の掘る手順は、下図のようにまず墨に沿って鑿立てをして、そこから少し内に入った箇所から口切りをして掘り始める。これは最初から墨に沿って強く打ち込むと、切刃に圧迫されて穴が必要な大きさよりも大きくなってしまうことがあるからである。次に中央に刃を入れV字型に掘り取る。最後に仕上鑿で墨に沿って丁寧に削り取る。穴掘りの仕事で注意すべき点は、穴の位置と形が常に正しくなるよう材の真墨を絶えず意識しながら掘り進めることである。大きな材では穴が曲がらないよう、常に定規などで確認を怠らないことが必要である。

穴掘りの仕事は一日に40ほどの穴を掘るといい、そのためには大きな玄能で効率よく鑿を叩かなければならない。叩鑿はそれに耐えられるよう頑丈につくられている。

▲ 穴の掘り方

 

参考文献

  • ・村松貞次郎監修『わが国大工の工作技術に関する研究』財団法人労働科学研究所、1984
  • ・秋岡芳夫監修・吉見誠著『木工具・使用法 _機能・種類・仕立て・使い方-』創元社、1980
  • ・時野谷茂「大工道具と大工仕事」『大工道具集』新建築社、1984

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