墨掛道具[sumikake-dougu]
すみかけどうぐ
すみかけどうぐ
墨壺は、木材その他の材の表面に、長い直線を正確に引くのに使用します。壺糸の一端を”かるこ”に結び付け、他方を糸口から墨汁を蓄えた池に通し、糸巻車に巻き取ります(図参照)。墨汁は真綿等に含ませて池に入れ、壺糸には絹糸を使用します。
使用法は、左手に墨壺を持ち、材に”かるこ”の針を刺して壺糸の一方を固定します。必要な長さの糸を繰り出したところで、親指で車の回転を止め、人差指で糸を必要な位置に押えて緊張させ、右手で糸をまっすぐつまみ上げて放します。こうして糸の弾力性を利用することで、材料の起状にかかわらず正確な直線を引くことができます。
墨壺の材料にはおもに欅(けやき)が用いられ、糸口は陶器や真鍮(しんちゅう)などで補強されています。昔は使用者が手造りしていましたが、現在は専門の職人の手によるものが多く、プラスチック製品もあります。形はさまざまあり、彫刻など意匠が凝らされたものもあります。車に把手付のものと付かないものとがあり、主に関西の大工は車を手で回して糸を巻き取る把手無し形式を使用し、関東の大工は把手付を好むといわれます。
顔料に墨汁ではなく紅殻(べんがら)を使用したものを朱壺(しゅつぼ)と呼びます。紅殻は水洗いすると消えるため、主に磨き丸太などの自然木を、木肌を削らずそのまま生かして使う場合の墨付けなどに使用します。
墨壺の各部名称
墨さしは、一端がヘラ状、反対側が細い棒状になっています。墨汁を付けて、ヘラ状の側で線を、棒状の側で記号、あるいは文字を書くのに使用します。墨壺、朱壺と共に用いられます。
材質は竹でできています。ヘラ状の側は巾約10〜15mm、先端から約1〜2cmの深さまで縦に薄く割り込みをいれ、ヘラ先の部分を斜めに切り落としています。この部分を曲尺などに沿わせて線を引きます。熟練者は、割り込みを30〜40枚位に極めて薄くいれるといいます。
矢立とは小型の携帯用筆入れのことです。墨を蓄える墨入れと、筆を収納する棹部分からなっています。番付けの時などに、墨さしのかわりに使用することがあります。
矢立各種